本部スタッフの倉西です。
別日のブログ「なぜペット(動物)は号泣しないのか」(5/9)、「ペット感涙漫画」(6/6)、そして先日更新したペットシッターコラム「ペットは鳴けるけど泣けない理由」と、何かと涙をテーマにしてきた最終章として、今日はせっかく描いた大作『ペット感涙漫画』を、とことん考察したいと思います。
まずは下記のペット漫画にお目通しいただき、感涙に浸ってください。
ペット感涙漫画(ディレクターズカット版)
ペット感涙漫画 縦読みバージョン
無声映画のようなセリフなしのサイレント漫画は、心の声や会話部分を読み手の想像力に委ねるため、それだけ感情移入や解釈の余地が広がるものです。
セリフやナレーションがないということは、言語を問わずワールドワイドな作品である一方、作家の力量・演出力が問われる高度な表現手法といえるでしょう(えっへん)。
そんな自画自賛はさておき、本当は「正しく伝わってなかったらどうしよう・・」という不安から、今回は終結編として、コマに隠されたメッセージなども取り上げつつ、作品を解説していきたいと思います。
落ち込んでいる女の子。ブランコは揺れ動く心の比喩。
ただ座る姿に、前(未来)にも後ろ(過去)にも漕ぎ出せない、少女の心境が表れています。
引っ越しによる過去の「別れ」と、新天地に馴染めぬ「疎外感」
二つの悲しい状況は、女の子以外“色の薄い世界”で孤独さを強調しています。
!?
草むらから子猫が現れ
孤独な少女と出会います。
ニャー(はじめまして)と言っているのでしょう。
額の葉っぱは、タヌキでいうところの“変身”を暗喩し、この出会いがもたらす変化を予期させます。
擦り寄る猫に、手を差し伸べる少女。
ここで初めて、女の子の顔に笑顔が宿ります。
少女は猫を連れて帰りますが、初めての体験に抱き方も分からず、服で包むようにして大切に運びます。
それに応えるかのように、少女の服に爪を立てて、しっかりと捕まる猫。
・・しかし、背景の電柱には、既に「迷い猫」の貼り紙が・・。
『捨て猫・捨て犬あるある』ですが、「ウチでは飼えません」と反対する母親。
はじめての命の温もりに、大泣きして懇願する少女。
折れる母。
そして、その日から始まる猫との新生活。
引っ越してからずっと落ち込んでいた娘の笑顔に、両親も思わずにっこり。
枕元には「ねこ」の本。もっと知りたい~女の子の健気な思いと、安心しきって隣で眠る子猫。
「行ってきまーす」
「ニャー(いってらっしゃーい)」
孤独だった少女のもとに、子猫をきっかけに広がる友達の輪。
こんな日がずっと続けば・・
しかしある日、母が見つけてしまいます。
!?
現実を理解できない少女。ショックのあまり、猫じゃらしを持つ手が止まってしまい、だから猫の興味がボールに移るという構図。
(作者談:この少女の顔・・・ここが一番の号泣ポイントだと思っています)
手放したくないと泣きじゃくる少女に、説得する親。
当然、最終的には元の飼主に返すという決断に至ります。
女の子の手から猫が離され、ただただ泣く少女と、そんな娘の姿に涙をこらえきれない母。
「子猫が戻ってきた!」と歓喜する少女と、最愛を失う少女のコントラスト。
画像をアップにすると、少女の涙で父親の服が変色していることが分かります。
叙述トリックのような「お世話してくれたことに感謝するメール」
(作者談:スマホの時間15:05の『505』は、ペットシッター『SOS』と絡めています)
そのメールを受け取ったのは、大人になった少女だった。
お婆さんに代わって犬の散歩をしたり
留守中の猫のお世話をする、ペットシッターになっていたのです。
そんなある日。
お世話の終了報告を書いていると、一通のメールが。
!?
新規のご依頼メールのアイコンには、見覚えのある猫の画像がー
ー!?
蘇る記憶
半信半疑のまま、そのお客様との「お打合せ」へ挑むシッター。
!?
「この猫では?」
「え?それは先代の猫でー」
いまだ待ち受けにしている子猫を飼い主さんに見せ、遺影を指さす飼い主さん。
交錯するそれぞれの記憶。
手放した温もりと、再会の喜びーあのとき交わることのなかった涙が、大人になって甦る。
命は巡り、想いは繋がる。
数奇な運命が紡ぐ、ペットシッターの物語。
Fin~
いかがでしたか?
解説付きだと、また違った感慨があったのではないでしょうか。
この漫画はもともと、ペットシッターSOS加盟店に毎月発行されている『FC通信』に記載したものでしたので、コマ数制限の関係から、最後はやや急ピッチな終わり方となってしまいました。
ブログや通信にコラムと、どれだけ漫画をこするんだという話ですが、作者もペンを握りながら何度となく目をこすったー感情移入しまくったー作品ですので、また何かしら理由をつけてどこかで紹介できればと思っています(しつこい)。
では、倉西先生の次回作に期待しましょう。
by 倉西